企業年金における予定死亡率とは

企業年金における予定死亡率とは

予定死亡率の定義

– 予定死亡率とは？

企業が従業員のために積み立てを行う年金制度である企業年金制度において、加入者や年金受給者の方々が、一年間にどれくらいの割合で亡くなって制度から脱退していくのかを予測した数値を「予定死亡率」と言います。

この予定死亡率は、男女別や年齢別に細かく計算された確率で表されます。例えば、男性の30歳の予定死亡率は0.05%、女性の30歳の予定死亡率は0.03%といったように、年齢や性別によって異なる確率が設定されています。

なぜなら、一般的に男性よりも女性のほうが平均寿命が長いため、年金制度から脱退する確率も低くなるからです。

この予定死亡率は、将来の年金給付額を計算したり、年金制度全体の財政状況を把握したりする上で非常に重要な要素となります。

もし予定死亡率よりも実際の死亡率が低い場合、つまり加入者や年金受給者が長生きする場合は、年金制度の運営費用が増加する可能性があります。

逆に、予定死亡率よりも実際の死亡率が高い場合は、運営費用が減少する可能性があります。

そのため、年金制度を適切に運営していくためには、将来の社会状況や医療技術の進歩などを考慮しながら、定期的に予定死亡率を見直していく必要があります。

年金制度における重要性

近年、平均寿命の延びは喜ばしいニュースである一方、年金制度にとっては大きな課題となっています。企業年金制度は、従業員が老後の生活資金を確保するための重要な役割を担っています。しかし、この制度は長期にわたる運用を前提としているため、加入者の寿命が延びるほど、年金原資の不足リスクが高まります。

企業年金は、あらかじめ予想した死亡率に基づいて、給付額や積立金の額を計算しています。ところが、予想よりも長生きする人が増えると、年金はより長い期間にわたって支払われることになります。その結果、当初の見込みよりも多くの年金原資が必要となり、不足が生じる可能性が出てきます。

逆に、予想よりも早く亡くなる人が増えれば、年金原資は多く残ることになります。予定死亡率は、このように加入者の寿命リスクを予測し、年金制度の健全性を保つために欠かせない指標です。適切な予定死亡率を設定することで、将来にわたって安定した年金給付を実現できるよう、企業は年金制度の見直しや運用方法の工夫などを継続していく必要があります。

厚生労働省の関与

– 厚生労働省の関与

企業年金制度において、将来の年金受給者の寿命を予測するために用いられる予定死亡率は、その制度の運営を左右する重要な要素です。将来の年金支給額は、この予定死亡率に基づいて計算されるため、予定死亡率が不適切であれば、年金制度の健全性が損なわれる可能性があります。

このような事態を防ぐため、厚生労働省は企業年金制度における予定死亡率に対して一定の基準を設けています。具体的には、厚生年金基金と確定給付企業年金という二つの制度で、それぞれ異なる基準が定められています。

厚生年金基金の場合は、「厚生年金基金の財政運営について」という厚生労働省通知の中で示された死亡率を基本とするよう指導されています。この通知では、過去の加入者の死亡状況などのデータに基づいて算出された死亡率が示されており、基金はこの死亡率を参考にしながら、自社の制度に適した予定死亡率を設定することになります。

一方、確定給付企業年金の場合は、厚生労働省告示によって定められた基準死亡率を用いることが義務付けられています。この告示では、性別や年齢ごとに詳細な死亡率が定められており、企業は原則としてこの基準に従う必要があります。

このように、厚生労働省は企業年金制度における予定死亡率に対して一定の関与を行うことで、制度の安定的な運営を図っています。

実態に合わせた調整

厚生労働省は、企業年金の運営にあたって必要な死亡率の基準を示しています。しかしながら、この基準はあくまで一般的なものであり、企業ごとに異なる従業員の状況を完全に反映しているわけではありません。例えば、ある企業では従業員の平均年齢が高く、別の企業では若手社員が多いといったように、企業によって従業員の年齢構成は大きく異なります。また、従業員の健康状態も企業ごとに異なり、健康的な職場環境を重視している企業もあれば、そうでない企業もあるでしょう。

このような実情を踏まえ、企業年金制度においては、各企業が独自の調整を加えることが認められています。具体的には、過去の死亡者数や平均寿命といった自社のデータを分析し、厚生労働省の基準となる死亡率に一定の割合を乗じることで、より実態に即した予定死亡率を算出します。過去のデータに基づいて調整を行うことで、将来発生する可能性のある年金給付額をより正確に見積もることが可能となります。

このように、企業年金は、厚生労働省の基準を機械的に適用するのではなく、各企業の実態に合わせてきめ細かく調整を行うことで、より精度の高い年金財政の運営を実現しています。これにより、従業員に対する長期的な年金給付の安定化を図り、安心して老後の生活を送れるよう配慮されています。

まとめ

– 企業年金制度における予定死亡率の重要性企業年金制度は、従業員が老後に備え、安心して生活を送るための重要な役割を担っています。そして、この制度を適切に運用していく上で、予定死亡率は非常に重要な要素となります。予定死亡率とは、将来どのくらいの割合で従業員が亡くなるかを予測したものです。この予測に基づいて、企業は年金給付額や積立金の規模を決定します。もし予定死亡率が実際の死亡率よりも高ければ、必要以上の積立金を抱えることになり、企業の財務に負担をかけることになります。逆に、予定死亡率が実際の死亡率よりも低ければ、将来の年金給付に必要な資金が不足し、従業員への給付が滞ってしまう可能性も出てきます。厚生労働省は、企業年金制度の健全な運営を図るため、標準的な予定死亡率を公表しています。しかし、企業は自社の従業員の年齢構成や健康状態などを考慮し、より精度の高い独自の予定死亡率を設定することが重要です。例えば、従業員の健康状態が良く、平均寿命が長い傾向にある企業であれば、標準的な予定死亡率よりも低い死亡率を設定することが考えられます。適切な予定死亡率を設定することは、従業員への安定的な年金給付と企業の財政の安定化の両立を実現するために不可欠です。企業は、専門家の意見も参考にしながら、自社の状況を適切に反映した予定死亡率を設定し、企業年金制度の健全な運営に努める必要があります。