解散計画：厚生年金基金の終焉に向けた計画

解散計画：厚生年金基金の終焉に向けた計画

解散計画とは

– 解散計画とは厚生年金基金とは、企業が従業員のために独自に設立する年金制度でしたが、近年では運用難や加入者の減少などから、多くの基金が解散を余儀なくされています。そこで、加入者への影響を最小限に抑え、円滑な解散手続きを進めるために、平成25年の法改正で「解散計画」という制度が導入されました。この制度では、近い将来に解散することが決まっている厚生年金基金に対して、解散予定日における最終的な積立金額の目標や、その達成に向けた具体的な方法などをまとめた計画書を作成し、厚生労働大臣に提出することが義務付けられています。計画書には、加入者への給付方法や、年金資産の取り扱い、解散時の事務手続きなど、解散に関わる様々な事項が詳細に記載されます。例えば、給付については、一時金として受け取るか、他の年金制度に移行するかなど、加入者にとって最適な方法を検討する必要があります。また、資産の取り扱いについても、売却による換金や他の基金への移管など、様々な選択肢を検討し、計画的に進めていく必要があります。このように、解散計画は、厚生年金基金が解散に向けて財政運営を行う上で、重要な指針となるとともに、加入者に対して解散に関する情報を透明化し、安心して手続きを進めてもらうための重要な役割を担っています。

計画策定の背景

従来、厚生年金基金は、毎年のように、その時の財政状況や運営状況を踏まえて、基金を続けるか、解散するかの判断を迫られてきました。
しかし、すでに将来的な解散が見えている基金の場合、毎年のように財政状況を詳しく調べるのは、基金にとって大きな負担となっていました。また、基金に加入している人にとっても、将来の見通しが立てにくいという問題がありました。
そこで、将来的に解散することが明らかな基金については、長期的な視点に立って計画的に解散できるように、解散計画制度が導入されることになりました。この制度によって、基金は、いつまでに、どのような手順で解散するかを、あらかじめ計画し、関係者に示すことができるようになりました。

計画の内容と審査

解散を決議した企業年金基金は、厚生労働大臣に解散計画を提出して、認可を受ける必要があります。

この解散計画には、どのような内容を具体的に記載する必要があるのでしょうか？

計画書には、まず、いつ解散するのかという解散予定日を記載します。そして、解散日までに積立てを目標とする金額を明確にします。加入者への年金給付をどのように支払うのか（一時金か分割払いなど）、年金資産をどのように運用していくのかといった計画も盛り込む必要があります。

厚生労働大臣は、提出された計画書の内容を審査します。審査では、計画が年金法令に適合しているかどうか、加入者に不利益な影響を与えないかどうかといった点が特に重要視されます。

特に、解散時に積立金が不足する場合は、その不足額をどのように解消するのか、具体的な対策が求められます。もしも計画に問題があると判断されれば、計画は却下され、再提出を求められます。

厚生労働大臣によって計画が承認されると、基金はその計画に基づいて解散に向けた手続きを進めることになります。

解散計画のメリット

– 解散計画のメリット近年、企業年金制度において、解散計画制度の導入が進んでいます。これは、少子高齢化による加入者の減少や、企業の事業再編などを背景に、年金基金の解散が増加していることを受けての対策です。解散計画制度には、企業と加入者の双方にとって、多くのメリットがあります。まず、解散計画制度を導入することで、解散する基金は、より計画的で透明性の高い方法で解散手続きを進めることができます。従来は、解散が決定してから手続きを進めるため、どうしても手続きが複雑化し、時間がかかってしまう傾向がありました。しかし、あらかじめ解散計画を策定しておくことで、手続きの透明性を高め、円滑な解散を実現することができます。また、加入者にとっても、解散時期や給付水準などが事前に明らかになることで、将来の生活設計がしやすくなるというメリットがあります。従来は、いつ、どの程度の給付を受けられるのかが不透明であったため、加入者にとって将来への不安が大きくなってしまっていました。しかし、解散計画によって情報公開が進むことで、加入者は安心して老後の生活設計を行うことができます。さらに、解散計画に基づいて財政運営を行うことで、毎年の財政検証が不要となるため、基金側の事務負担軽減にもつながります。従来は、毎年の財政検証に膨大な時間と労力を費やしていましたが、解散計画の導入によって、これらの業務を大幅に削減することができます。このように、解散計画制度は、企業と加入者の双方にとって、多くのメリットをもたらす制度と言えます。

解散計画の対象となる基金

今回の解散計画の対象となるのは、平成25年の法律改正後、5年以内に解散を決めた厚生年金基金です。ただし、解散を希望するすべての基金が対象となるわけではありません。対象となるには、いくつかの要件を満たす必要があります。

まず、解散時期が明確に定まっていることが求められます。いつ頃解散するのか、具体的な時期が明確になっていなければなりません。さらに、解散に向けて具体的な計画が立てられていることも重要です。例えば、基金の加入者への説明会の実施や、年金資産の管理・運用方法の見直し、解散時の手続きなど、具体的な計画が求められます。

また、解散時に積立金の不足が見込まれる場合、その不足分を補填するための現実的な計画も必要となります。例えば、加入企業からの追加拠出や、運用資産の売却による資金調達など、不足額を解消するための具体的な方法が求められます。

これらの要件を満たした厚生年金基金のみが、今回の解散計画の対象となります。

解散計画と財政検証

解散を決議し、厚生労働大臣に解散計画を提出した厚生年金基金は、従来毎年実施されていた継続基準・非継続基準に基づく財政検証が免除されます。これは、解散という方向性が決定した基金に対して、毎年の詳細な財政状況のチェックよりも、解散計画に沿って適切に財政運営が行われているかどうかの検証を重視するためです。

厚生労働大臣が定める時期に行われるこの検証では、基金が提出した解散計画の内容と、実際の運用実績との間に大きな差異がないかが細かく調べられます。具体的には、計画で想定していた運用収益が確保できているか、積立金の状況は計画通りに進捗しているか、加入者や受給者への給付金の支払いが滞りなく行われているかといった点が重点的にチェックされます。

もし、検証の結果、計画と実績との間に大きな乖離が見つかった場合には、基金は計画の見直しや改善を求められることになります。これは、解散時においても、加入者や受給者の不利益を最小限に抑え、給付金の支払いを確実に行うという厚生年金基金の役割を果たすために非常に重要なプロセスです。