投資におけるベンチマーク乖離：トラッキングエラーとは

投資におけるベンチマーク乖離：トラッキングエラーとは

投資における目標達成度を測る

投資を始めるとき、多くの人は「老後の生活資金を準備したい」「住宅購入の頭金を貯めたい」など、それぞれの目標を持っているはずです。そして、その目標を達成するために、預貯金ではなく投資を選択する人も少なくありません。
投資を行う際、目標とする収益を上げるために、あらかじめ目標とする運用成績を決めておくことが大切です。この目標を具体的に示す指標として、「ベンチマーク」があります。
ベンチマークは、投資の成果を測るための「ものさし」のようなものです。例えば、日本株全体に投資する投資信託の場合、日経平均株価やTOPIXなどの株価指数がベンチマークとしてよく用いられます。これらの指数は、市場全体の動きを示すものなので、投資信託のパフォーマンスと比較することで、市場平均と比べてどれだけ良い成績を収めているのか、あるいは悪い成績なのかを判断することができます。
投資信託の中には、このベンチマークをどれだけ上回る成績を目指すか、といったことを「運用目標」として設定しているものもあります。投資信託を選ぶ際には、こうした運用目標も参考にしながら、自分の投資目標に合致した投資信託を選択することが重要です。

トラッキングエラーとは何か

– トラッキングエラーとは？
投資信託を選ぶ際に、「ベンチマーク」という言葉を耳にすることがあるでしょう。ベンチマークとは、投資信託の運用成績の目標となる指標のことです。例えば、日経平均株価やTOPIXなどが代表的なベンチマークとして挙げられます。

投資信託は、このベンチマークにできるだけ近い値動きを目指して運用されますが、完全に一致させることはできません。そこで登場するのが「トラッキングエラー」という指標です。

トラッキングエラーとは、ベンチマークと実際の投資信託の運用成績とのズレを示す指標です。具体的には、投資信託の運用成績とベンチマークの差（アクティブ・リターン）のばらつきの大きさを表します。

トラッキングエラーが大きい場合、その投資信託はベンチマークから大きく乖離して値動きする可能性があり、リスクが高いと判断されます。一方、トラッキングエラーが小さい場合、その投資信託はベンチマークに連動して安定した運用成績を上げている可能性が高く、リスクが低いと判断されます。

トラッキングエラーは、投資信託がどれだけのリスクを取って運用されているかを知るための重要な指標の一つです。投資信託を選ぶ際には、目論見書などでトラッキングエラーを確認するようにしましょう。

トラッキングエラーの数値が意味するもの

– トラッキングエラーの数値が意味するもの投資信託を選ぶ際、「トラッキングエラー」という言葉を耳にすることがあります。これは、投資信託のパフォーマンスが、目指す指標（ベンチマーク）とどれだけ乖離しているかを示す指標です。トラッキングエラーは、通常パーセントで表示されます。例えば、トラッキングエラーが3%と表示されている場合、これは何を意味するのでしょうか。これは、過去のデータに基づくと、その投資信託の収益率は、68%の確率でベンチマークの収益率からプラスマイナス3%の範囲内に収まると予想されることを示しています。つまり、ベンチマークが5%上昇した場合、その投資信託は、2%から8%の間で推移する可能性が高いと予想されます。ただし、注意が必要なのは、トラッキングエラーはあくまで過去のデータに基づいた統計的な指標であるということです。将来の市場環境や経済状況によって、実際の収益率は大きく変動する可能性があります。トラッキングエラーが低いからといって、必ずしも将来もベンチマークに近い収益率になるとは限らないのです。しかしながら、トラッキングエラーは過去のデータから将来のリスクや収益の傾向を把握する上で、有効な指標となりえます。投資信託を選ぶ際には、トラッキングエラーの数値だけに注目するのではなく、投資信託の運用方針や投資対象、コストなどを総合的に判断することが重要です。

アクティブ運用とパッシブ運用

– アクティブ運用とパッシブ運用

投資の世界では、大きく分けて「アクティブ運用」と「パッシブ運用」の二つの運用方法があります。どちらも投資家が利益を得ることを目指していますが、その手法や目的は大きく異なります。

アクティブ運用は、市場全体の動きを示す指標となる「ベンチマーク」を上回る利益を目指して、銘柄選択や投資タイミングを積極的に調整する運用方法です。 例えば、成長が期待できる企業の株を厳選して投資したり、市場の動向を分析して、価格が上昇すると予想されるタイミングで株式を購入したりといった方法が挙げられます。

一方、パッシブ運用は、日経平均株価やTOPIXなどのベンチマークと同様の値動きを目指す運用方法です。 具体的には、ベンチマークと同じ構成比率で銘柄を組み入れた投資信託である「インデックスファンド」への投資が代表的です。

どちらの運用方法にも、それぞれメリットとデメリットが存在します。アクティブ運用は、成功すればベンチマークを上回る高い利益を得られる可能性がありますが、そのためには高度な分析力や経験が必要とされ、常に市場の動向を注視する必要があります。一方、パッシブ運用は、運用コストが比較的低く、専門的な知識がなくても始めやすいというメリットがあります。しかし、ベンチマークを大きく上回る利益を得ることは難しいという側面もあります。

投資を行う際には、自身の投資目標やリスク許容度、運用にかけられる時間や労力などを考慮し、どちらの運用方法が適しているかを慎重に見極めることが重要です。

トラッキングエラーを投資判断に活かす

投資信託を選ぶ際に、基準価額の動きがどれだけベンチマークと一致しているかは重要な要素です。このズレを「トラッキングエラー」と呼びますが、これを投資判断に役立てることができます。
例えば、日経平均株価への連動を目指す投資信託Aと投資信託Bがあるとします。もしAのトラッキングエラーが小さく、Bのトラッキングエラーが大きい場合、Aの方が日経平均株価の値動きにより近い運用をしていると判断できます。トラッキングエラーが小さいということは、それだけベンチマークに忠実に運用されていることを示しているからです。

しかし、トラッキングエラーが小さいことが常に良いわけではありません。投資信託の運用には、目標とするベンチマークの値動きに近づけるためのコストもかかります。トラッキングエラーを極端に小さくしようとすると、その分運用コストも高くなる可能性があります。
大切なのは、自分のリスク許容度や投資目標に合ったトラッキングエラーの投資信託を選ぶことです。コストを抑えたい場合は、多少トラッキングエラーが大きくても許容範囲内であれば問題ありません。逆に、ベンチマークへの連動性を重視する場合は、トラッキングエラーの小さい投資信託を選ぶと良いでしょう。
投資信託を選ぶ際には、トラッキングエラーだけでなく、運用コストや過去のパフォーマンス、運用会社など、様々な要素を総合的に判断することが重要です。