企業年金と給付現価負担金

企業年金と給付現価負担金

厚生年金基金の安定運用

会社員にとって、老後の生活を支える公的な年金制度に加えて、会社が独自に準備する企業年金は、より安心して老後を迎えるための重要な役割を担っています。企業年金にはいくつかの種類がありますが、その中でも会社が独自に設立・運営する厚生年金基金は、従業員と会社双方からお金を出し合って将来の年金原資を形成するものです。

しかし、近年では経済環境が目まぐるしく変化し、物価の上昇や長寿命化が進んでいます。このような状況下では、過去の運用実績が良かったとしても、将来にわたって年金を安定的に給付できるという保証はありません。

そこで、厚生年金基金の財政基盤を強化し、将来にわたって年金を安定的に給付できるようにするために設けられたのが給付現価負担金という制度です。これは、将来の年金給付に必要な金額をあらかじめ予測し、その金額を会社が負担金として積み立てるというものです。

給付現価負担金を積み立てることで、将来の年金給付に必要な資金を計画的に準備することができ、年金制度の安定化を図ることができます。また、会社にとっては、負担金の額が明確になることで、長期的な視点に立った経営計画を立てることにも役立ちます。

給付現価負担金とは

– 給付現価負担金とは従業員の皆さまが将来受け取る年金をより安心して確保するための制度の一つに、-厚生年金基金-があります。これは、企業が従業員のために年金基金を独自に設立し、将来の年金給付に備えるというものです。しかし、経済状況の変化や運用成績の悪化などによって、基金の資産が減少してしまう可能性もあります。もしも、将来の年金給付に必要な金額を、基金の資産だけで賄えなくなってしまうと、従業員の皆さまは、本来受け取るはずの年金を満額受け取れないかもしれません。このような事態を避けるために設けられているのが「-給付現価負担金-」という制度です。これは、厚生年金基金の資産が、将来の年金給付に必要な額を下回った場合に、国が資金援助を行うというものです。簡単に言うと、基金が年金を支払うために必要な金額が不足した場合に、国がその一部を補填してくれるという仕組みです。この制度によって、万が一、基金の財政状況が悪化した場合でも、従業員の皆さまへの年金給付を維持することができます。つまり、給付現価負担金は、従業員の皆さまの年金受給の安全性を高めるための、国による重要なセーフティネットと言えるでしょう。

過去法への移行とコロガシ方式

かつて、保険会社が将来加入者に対して支払うべき責任準備金を計算する方法として、将来発生するであろう保険金支払いを将来の時点で予測して積み立てる「将来法」が用いられていました。しかし、経済環境の変化が激しくなるにつれて、将来の金利や死亡率などを正確に予測することが困難になり、責任準備金の額が変動しやすくなるという問題が生じていました。

そこで、より安定的な責任準備金の計算方法として、平成11年10月からは「過去法」、いわゆる「コロガシ方式」に移行しました。この方式は、過去の保険契約で実際に発生したデータに基づいて責任準備金を計算するため、経済環境の変化の影響を受けにくく、より安定した財務基盤を築くことが可能となります。

この「過去法」への移行に伴い、過去の保険契約で実際に発生した給付債務を反映した不足分については、「給付現価負担金」として政府が負担することになりました。これは、保険契約者に対して将来の給付を約束していた保険会社の責任を、国が一部肩代わりすることを意味します。このようにして、保険会社の財務の健全性を維持しつつ、保険契約者の保護を図るための制度設計が行われました。

支給条件と金額

企業年金を運営していく上で、将来の年金給付の財源を確保しておくことは非常に重要です。そのために、企業はあらかじめ年金給付に必要な資金を積み立てておく必要があります。これが最低責任準備金と呼ばれるものです。

一方、過去に給付が開始されたものの、まだ年金資産に組み入れられていない部分（過去期間代行部分）に対応する給付についても、将来支払うべき年金給付として、その財源を確保しておく必要があります。これが過去期間代行給付現価です。

給付現価負担金は、この過去期間代行給付現価を積み立てるために、国が企業に対して支給するものです。ただし、無条件に支給されるわけではなく、最低責任準備金が過去期間代行給付現価を一定割合を下回っている場合に支給されます。

支給額は、下回った割合に応じて段階的に決められています。例えば、最低責任準備金が過去期間代行給付現価の半分を下回り、かつ4分の1以上である場合には、下回った額の5分の1が支給されます。また、最低責任準備金が過去期間代行給付現価の4分の1を下回った場合には、過去期間代行給付現価の半分と最低責任準備金との差額が一括して支給されます。

このように、給付現価負担金は、企業年金の財政状況に応じて支給され、企業の年金財政の安定化を支援する役割を担っています。

従業員と企業の安心のために

– 従業員と企業の安心のために従業員が安心して老後の生活設計を描き、企業が安心して事業活動に集中できる環境を作るためには、将来にわたって安定した年金給付を約束する企業年金制度の存在が欠かせません。しかし、近年では経済環境の変化や少子高齢化の影響を受け、年金制度の運営は厳しさを増しています。そこで重要な役割を担うのが給付現価負担金制度です。これは、将来従業員に支払う年金給付をあらかじめ計算し、その現在価値に相当する金額を企業が負担金として積み立てる仕組みです。この制度によって、年金基金の財務基盤は強化され、将来の年金給付を確実にすることができます。企業にとっては、計画的に負担金を積み立てることで、急激な費用負担の増加を抑え、健全な経営を維持することにつながります。また、従業員にとっても、将来受け取る年金額の見通しが立つため、安心して長く働き続けることができます。このように、給付現価負担金制度は、従業員と企業双方にとってメリットのある制度と言えるでしょう。企業年金制度の安定的な運営のためには、この制度の役割と重要性を深く理解し、積極的に活用していくことが重要です。将来の不安を解消し、安心して働き続けられる環境を共に作り上げていきましょう。