国民所得:市場の力とその決定要因
投資について知りたい
先生、「市場メカニズムと国民所得の水準」のところがよく分かりません。教えてください。
投資アドバイザー
わかった。では、市場で物が買ったり売ったりされることをイメージしてみて。物がたくさん売れると、作る人ももっと作って、もっと売ろうとするよね?
投資について知りたい
あ、はい。売れると、作る人もやる気が出ますよね!
投資アドバイザー
そう!経済がうまくいっているときは、みんなが作ったものを欲しいと思う人がいて、それが国民全体の収入に繋がっていくんだ。つまり、作った物の量で収入が決まるって考え方が「市場メカニズム」で説明される考え方だよ。
市場メカニズムと国民所得の水準とは。
「市場メカニズムと国民所得の水準」は投資に関係する言葉です。市場メカニズムがうまく働くと、モノやサービスの供給量が決まり、それが国民全体の所得の水準を決めることになります。これは、「作ったものは全部売れる」という考え方である、新古典派経済学の「セイの法則」で説明されます。反対に、市場メカニズムがうまく働かない場合は、モノやサービスに対する需要の大きさが国民全体の所得の水準を決めることになります。これは、「人々の需要の大きさに合わせて、モノやサービスの供給量、つまり国民全体の生産量(国民所得)が決まる」という考え方である、ケインズ経済学の「有効需要の原理」で説明されます。
市場メカニズムと国民所得
私たちが日々行っている経済活動の中心には、需要と供給の関係によって価格が決まり、資源が配分される「市場メカニズム」が存在します。
この市場メカニズムがうまく機能すれば、生産者は人々が本当に必要とするモノやサービスを必要なだけ作り出し、スムーズに消費者に届けることができます。
その結果、経済全体が活性化し、私たちが受け取る給与や配当といった所得が増え、国民全体の所得水準が向上すると考えられます。
これは、19世紀の経済学者であるジャン=バティスト・セイが提唱した「セイの法則」に基づく考え方です。
セイの法則は、「供給が自ら需要を生み出す」という法則です。
つまり、企業は売れないものを大量に作ることはなく、生産されたものはすべて誰かが購入する、という前提に立っています。
この考え方に基づけば、企業が積極的に生産活動を行い、より多くのモノやサービスが市場に供給されれば、人々の所得もそれに応じて増加していくと考えられます。
概念 | 説明 | 結果 |
---|---|---|
市場メカニズム | 需要と供給の関係によって価格が決まり、資源が配分される仕組み | 経済活性化、所得増加、国民全体の所得水準向上 |
セイの法則 | 「供給が自ら需要を生み出す」という法則。企業は売れないものを大量に作ることはなく、生産されたものはすべて誰かが購入するという前提に基づく | 企業の積極的な生産活動、市場へのモノやサービス供給増加、人々の所得増加 |
需要と供給のバランス
– 需要と供給のバランス
私たちが日々暮らす経済社会において、商品やサービスの価格は、需要と供給という二つの力の綱引きによって決まります。 つまり、ある商品を欲しいと思う人が多く、その商品の量が少ない場合は、価格は高くなります。逆に、その商品を欲しいと思う人が少なく、商品の量が多い場合は、価格は安くなるのです。
これを「市場メカニズム」と呼びます。 市場メカニズムがうまく機能している状態とは、需要と供給のバランスがとれている状態を指します。
例えば、新しいゲーム機が発売され、多くの人が欲しがっているとします。しかし、ゲーム機の生産が追い付かず、お店に並ぶ数が限られている場合は、ゲーム機は高値で取引されるでしょう。これは、需要が供給を上回っている状態です。
一方、時間が経つにつれて、ゲーム機の生産体制が整い、お店に十分な数が並ぶようになると、価格は落ち着いてきます。さらに、新しいゲーム機が登場すると、以前のゲーム機の人気が下がり、価格はさらに下落する可能性もあります。これは、供給が需要を上回っている状態です。
このように、市場では、需要と供給が絶えず変化し、そのバランスによって商品の価格が決まります。そして、この価格調整機能が、経済全体を安定させるために重要な役割を果たしているのです。
需要と供給の関係 | 価格への影響 | 具体例 |
---|---|---|
需要 > 供給 | 価格上昇 | 新発売のゲーム機 |
需要 < 供給 | 価格低下 | 型落ちのゲーム機 |
需要 = 供給 | 価格は安定 | 市場メカニズムが機能している状態 |
市場メカニズムの限界
確かに、市場における商品の売買は、需要と供給の関係によって価格が決まり、資源が効率的に配分されるという理想的な仕組みです。しかしながら、現実の世界では、市場メカニズムが常に期待通りに機能するとは限りません。情報や技術の差、環境問題のように、市場だけでは適切に対応できない問題が存在するからです。
例えば、中古車の売買を考えてみましょう。売主は車の状態について買い手よりも多くの情報を持っています。このような情報の偏りがある場合、質の悪い車が適正価格よりも高い価格で取引されてしまう可能性があります。また、工場が製品を生産する際に、有害物質を排出するケースも考えられます。この場合、排出された有害物質による健康被害というコストは、製品の価格に反映されません。このような市場メカニズムでは解決できない問題を「市場の失敗」と呼びます。
このような市場の失敗を修正し、経済の安定と成長を促すために、政府による適切な介入が必要となる場合があります。具体的には、市場における競争を促進するための独占禁止法や、環境汚染を抑制するための環境規制などが挙げられます。これらの政策は、市場メカニズムだけでは解決できない問題に対処し、より公正で持続可能な社会を実現するために重要な役割を担っていると言えるでしょう。
市場メカニズムの問題点 | 具体例 | 政府の介入策 |
---|---|---|
情報や技術の差 | 中古車市場における情報の非対称性(売主が車の状態に関する情報を多く持つ) | – |
環境問題 | 工場の有害物質排出による環境汚染と健康被害 | 環境規制 |
市場の失敗への対策 | 市場メカニズムだけでは解決できない問題への対応 | 独占禁止法、環境規制など |
有効需要の原理
– 需要が供給を生み出す?
20世紀に活躍した経済学者、ジョン・メイナード・ケインズをご存知でしょうか。彼は、それまでの経済学の常識に挑戦し、市場メカニズムが必ずしも万能ではないことを示しました。
従来の経済学では、供給が需要を生み出すと考えられてきました。しかしケインズは、需要が供給を決定するという、全く逆の考え方を提唱したのです。これが「有効需要の原理」と呼ばれる考え方です。
企業は、当然ながら売れる見込みのない製品は作りません。需要が見込まれる量だけを生産し、販売するのです。つまり、人々の需要こそが企業の生産活動を左右し、経済全体を動かす原動力となるのです。
もし、人々の需要が不足すればどうなるでしょうか。企業は製品を売ることができず、在庫を抱えることになります。すると、企業は生産活動を縮小し、従業員の解雇や賃金カットといった事態も起こりえます。
その結果、人々の所得は減少し、ますます需要は冷え込んでしまいます。このように、需要の不足は経済全体の悪循環を生み出し、長期的な不況に陥ってしまう危険性があるのです。ケインズはこのような状況を打開するために、政府が積極的に需要を創出する必要があると主張しました。
従来の経済学 | ケインズの経済学 |
---|---|
供給が需要を生み出す | 需要が供給を決定する(有効需要の原理) |
– | 需要不足→企業の生産活動縮小→解雇・賃金カット→更なる需要不足→不況 |
– | 政府が需要を創出する必要性 |
需要不足への対策
経済が停滞し、モノやサービスに対する需要が不足する状況は、深刻な問題を引き起こします。企業は商品を売ることができず、生産活動や設備投資を縮小し、雇用も減少します。人々は職を失い、所得が減少し、更に消費が冷え込むという悪循環に陥ってしまうのです。
このような需要不足が生じた場合、経済学者のケインズは、政府が積極的に対策を講じるべきだと主張しました。具体的には、政府が公共事業などにお金を使うことで、需要を直接的に創出するのです。例えば、道路や橋などのインフラ整備や、学校や病院などの公共施設の建設などが挙げられます。
また、政府は減税によって、家計が自由に使えるお金を増やすことも効果的です。可処分所得が増えれば、人々はより多くの消費活動を行うようになり、経済全体が活性化します。
さらに、中央銀行による金融緩和政策も需要不足の解消に貢献します。金利を引き下げることで、企業はより低コストでお金を借りられるようになり、設備投資を促進することができます。
このように、ケインズは、市場メカニズムだけに頼っていては、需要不足から脱却することは難しいと考え、政府による積極的な役割を重視しました。需要不足の対策は、経済の安定と成長を維持するために非常に重要な課題と言えるでしょう。
需要不足対策 | 内容 | 効果 |
---|---|---|
政府による財政政策 | 公共事業 | 需要を直接創出し、雇用を増加させる。 |
減税 | 家計の可処分所得を増やし、消費を促進する。 | |
中央銀行による金融政策 | 金融緩和(金利引下げ) | 企業の資金調達コストを低下させ、設備投資を促進する。 |
二つの理論の調和
経済学の世界では、かつては市場メカニズムを重視する考え方と、政府による介入を重視する考え方が対立していました。しかし、現代の経済学では、それぞれの理論の良い部分を組み合わせることで、より現実的な経済分析が可能になっています。
具体的には、基本的には市場メカニズムの力を活かし、需要と供給の関係を通じて資源を効率的に配分することを目指します。同時に、市場メカニズムだけでは解決できない問題に対しても、政府が適切な対策を講じることで、経済の安定と成長を図ろうとしています。
例えば、市場における競争を促進したり、企業にとって負担となる規制を緩和したりすることで、市場メカニズムがより効率的に働くように促します。一方で、社会保障制度を充実させて困っている人々を助けたり、教育や職業訓練の機会を拡充したりすることで、全ての人が能力を最大限に発揮できるような環境を整えようとしています。
このように、現代の経済学では、市場メカニズムと政府による介入のバランスを取りながら、持続可能な経済成長を目指しています。
経済学の考え方 | 詳細 | 例 |
---|---|---|
市場メカニズム重視 | 需要と供給の関係を通じて資源を効率的に配分する | 市場における競争促進、企業の負担となる規制緩和 |
政府による介入重視 | 市場メカニズムだけでは解決できない問題に対して、政府が介入することで経済の安定と成長を図る | 社会保障制度の充実、教育や職業訓練の機会拡充 |