政府支出が経済に与える影響：乗数効果を解説

政府支出が経済に与える影響：乗数効果を解説

政府支出と経済の関係

– 政府支出と経済の関係政府支出は、私たちの暮らしに必要な道路や橋などの公共事業や、教育や医療といった社会福祉制度などに使われます。これらの支出は、私たちの生活水準を維持し、より良いものにするために欠かせないものです。近年、国の借金である財政赤字が増えていることが問題となっていますが、そのような状況だからこそ、政府のお金の使い方について、より効果的に活用することが重要視されています。政府が支出を増やすと、企業は工場や設備への投資を増やしたり、新しい人を雇ったりするようになります。その結果として、経済活動が活発になり、人々の所得が増加する傾向があります。これは、政府の支出が、まるで経済というエンジンを動かす燃料のような役割を果たしているためです。しかし、政府支出を増やせば良いという単純な話ではありません。もしも、効果のない事業に無駄な支出をしてしまうと、財政赤字を拡大させるだけで、経済効果は期待できません。そのため、政府は、限られた予算をどのように配分し、どこに重点的に支出するかを慎重に判断する必要があります。私たち国民も、政府支出が私たちの生活とどのように関わっているのかを理解し、政府の予算の使い方に関心を持つことが大切です。

乗数効果とは何か

– 乗数効果とは何か

経済活動において、政府が支出を増やすと、その支出額以上の効果で国民全体の所得が増えることを「乗数効果」と呼びます。

例えば、政府が100億円の予算で新しい橋を建設するとします。この公共事業によって、建設会社は100億円の売上を得て、橋の建設に従事する人たちの所得も増えます。

所得が増えた人たちは、そのお金の一部を洋服や食べ物などの購入に充てます。すると、今度は洋服店や飲食店の売上と、そこで働く人たちの所得が増えます。

このように、政府の支出は、人から人へ、企業から企業へと波及するように広がり、経済全体を活性化させる力を持っています。そして、最終的に国民全体の所得は、最初の政府支出である100億円をはるかに上回る額にまで増加するのです。

これが乗数効果と呼ばれる現象です。

乗数効果の大きさ

– 乗数効果の大きさ乗数効果とは、政府が行う公共事業や減税などの経済対策によって生じる需要の増加が、波及的に経済全体に広がり、当初の需要増加額よりも大きな経済効果をもたらす現象を指します。 この効果の大きさは、経済状況や政策の内容によって大きく変動します。例えば、人々の所得が増加したとしましょう。人々が将来に不安を感じて貯蓄に回すお金が多い状況、つまり消費性向が低い場合は、経済全体への波及効果は限定的となり、乗数効果は小さくなります。一方、人々が将来に安心感を感じて消費に積極的な状況、つまり消費性向が高い場合は、所得増加分はより多く消費に回り、その消費がまた別の人の所得となり、さらに消費が生まれるという循環が生まれます。このような状況では、乗数効果は大きくなります。また、税金の高さも乗数効果に影響を与えます。税率が高い場合は、所得増加分の大部分が税金として徴収されるため、自由に使えるお金が減り、消費も抑制されます。その結果、乗数効果は小さくなります。逆に、減税が行われて税率が下がると、人々の手元に残るお金が増え、消費や投資が活発化するため、乗数効果は大きくなります。さらに、輸入が多い国の場合、国内での需要増加が海外からの輸入増加に繋がるため、乗数効果は小さくなります。これは、需要増加による経済効果が海外に流出してしまうためです。逆に、国内生産が盛んな国では、需要増加が国内の生産や雇用増加に繋がりやすいため、乗数効果は大きくなります。一般的に、不況で経済活動が停滞している時には、設備の稼働率が低く、失業者が多く存在します。このような状況下では、政府が公共事業などを通じて需要を創出すれば、企業は休止していた工場を稼働させたり、新たな従業員を雇用したりして対応します。その結果、生産活動が活発化し、雇用も増加するため、乗数効果は大きくなります。

乗数効果と財政政策

私たちが普段の生活を送る上で、経済は大きく影響しています。経済が安定している状態とは、物価も安定し、仕事も安定して見つけやすい状態のことを指します。
この経済状態を健全に保つために、国は様々な政策を行っています。その中でも、財政政策は、国が税金を集めたり、集めた税金を使って公共事業などにお金を使うことで、経済全体を調整する政策です。

例えば、不景気で仕事が減っている時、国は道路や橋の建設などの公共事業にお金を使うことで、人々が仕事に就く機会を増やします。そして、仕事に就いた人々は給料をもらうことで、生活に必要なものを買えるようになり、経済全体が活性化していきます。
このように、国の支出が、当初の金額以上の経済効果を生み出すことを「乗数効果」といいます。

逆に、景気が良すぎて物価が上がりすぎている時は、国は公共事業を減らすなど支出を抑えたり、税金を引き上げて人々の消費を抑えることで、物価の安定を図ります。
このように、国は乗数効果を考慮しながら、財政政策を実施し、経済の安定化を図っているのです。

乗数効果の限界

経済活動の活性化のために、政府が公共事業などにお金を使うことがあります。このとき、政府支出がもたらす経済効果は、支出額の何倍にもなることがあります。これを乗数効果と言います。例えば、政府が1兆円の公共事業を行ったとします。すると、建設会社は工事を受注することで収益が増え、従業員の給料を上げたり、新たな従業員を雇ったりするでしょう。給料が増えた人や新しく職を得た人は、より多くのお金を使うようになり、そのお金は他の企業の収益へとつながっていきます。このように、政府支出をきっかけとして、経済活動全体が活発化していく効果が期待できるのです。しかし、現実の経済は複雑であり、乗数効果は必ずしも期待通りに機能するとは限りません。例えば、政府が非効率な事業にお金を使ってしまった場合、その効果は限定的になってしまいます。また、政府支出の増加によって、金利が上がったり、円安が進んでしまう可能性もあります。金利が上がると、企業は設備投資を控えたり、個人は住宅ローンを借りづらくなったりするため、経済活動全体にブレーキがかかってしまうことがあります。また、円安が進むと、輸入品の価格が上昇し、企業の負担が増したり、家計の生活費が圧迫されたりすることがあります。このように、乗数効果には限界があることを理解し、政府支出を行う際には、その効果とリスクを慎重に検討していく必要があります。