シェンゲン協定：国境を超えた自由な移動

シェンゲン協定：国境を超えた自由な移動

シェンゲン協定とは

– シェンゲン協定とはシェンゲン協定は、ヨーロッパの多くの国々間で、人々がより自由に行き来できるように結ばれた約束事です。1985年6月14日、ルクセンブルクにある小さな町、シェンゲンで調印されたことから、この名前が付けられました。この協定の大きな特徴は、加盟国間で国境をまたぐ際の面倒な手続きをなくしたことです。通常、外国へ旅行する際にはパスポートを見せて、入国審査を受ける必要がありますが、シェンゲン協定加盟国間ではそれが不要になります。これは、加盟国の人々にとって、まるでひとつの大きな国に住んでいるかのように、自由に他の加盟国へ旅行や引っ越しができることを意味します。 仕事や勉強のために別の加盟国へ行くことも容易になり、国境を越えた経済活動や文化交流も活発になりました。当初はヨーロッパ共同体(EC)の一部の国々から始まったこの取り組みは、その後多くの国々が参加し、今ではヨーロッパの広範囲をカバーする重要な協定となっています。

協定の目的と背景

– 協定の目的と背景シェンゲン協定は、加盟国間における人の自由な往来を実現することを最大の目的としています。これは、ヨーロッパ共同体（EC）が掲げる「人、モノ、サービス、資本の自由な移動」という理念の根幹をなすものであり、その実現に向けた重要な一歩となりました。当時のヨーロッパは東西冷戦の真っ只中にあり、東西ドイツを隔てる「鉄のカーテン」に象徴されるように、国境を越えた移動は厳しく制限されていました。東西陣営の対立が深まる中で、西ヨーロッパ諸国は自由と民主主義という共通の価値観をよりどころとして、結束を強める必要がありました。シェンゲン協定は、このような時代背景のもと、西ヨーロッパ諸国が一体となって経済的な結びつきを強め、人々の交流を促進することで、平和で豊かな地域を築き上げることを目指したものでした。

協定の内容

– 協定の内容

シェンゲン協定は、加盟国間で人々の自由な往来を実現するための取り決めです。この協定の大きな特徴は、加盟国間における国境審査の撤廃です。これは、シェンゲン協定加盟国間を行き来する人々は、パスポートの提示や入国審査を受けることなく、自由に行き来できるようになることを意味します。

この自由な往来を実現するために、シェンゲン協定では、加盟国間で共通のビザ政策を採用しています。シェンゲン圏外から入国する際には、共通のビザを取得することで、シェンゲン協定加盟国のいずれの国にも入国することが可能になります。

一方で、犯罪防止やテロ対策などの安全保障面も重要な課題です。そのため、シェンゲン協定では、警察機関同士の情報交換や協力体制の強化についても定められています。これにより、犯罪者の摘発やテロの未然防止に努め、シェンゲン圏内の安全確保を目指しています。

加盟国

ヨーロッパの広域をパスポートなしで自由に移動できるシェンゲン協定。この協定には現在、27ヶ国が加盟しています。

シェンゲン協定は、1985年にベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、オランダの5ヶ国により創設されました。当時は冷戦の真っ只中。鉄のカーテンによって東西に分断され、人々の往来は制限されていました。

シェンゲン協定は、加盟国間における国境管理の撤廃を目指し、人々の自由な移動を実現することで、ヨーロッパ統合を促進することを目的としていました。

その後、1990年代に入ると、東西ドイツが統一され、冷戦が終結。ヨーロッパには新たな時代が到来しました。これを機に、イタリア、スペイン、ポルトガルなど、多くの国々がシェンゲン協定に加盟していきます。

現在では、EU加盟国のほとんどがシェンゲン協定に加盟しています。しかし、アイルランドやキプロスなど、独自の事情により加盟を見送っているEU加盟国も存在します。イギリスもかつてはEUに加盟していましたが、シェンゲン協定には参加していませんでした。

協定の効果と影響

シェンゲン協定は、ヨーロッパの人々の生活を大きく変え、様々な効果と影響をもたらしました。

最大の変化は、加盟国間の国境審査がなくなったことです。 これにより、人々はパスポートを見せることなく、加盟国間を自由に移動できるようになりました。まるでひとつの大きな国になったかのようです。

この自由な移動は、観光やビジネスに大きく貢献しました。 旅行者は簡単に複数の国を訪問できるようになり、企業は国境を越えた取引や事業展開がしやすくなりました。その結果、観光産業は活気づき、経済活動も活発化しました。

また、人々の交流が盛んになったことで、異なる文化や言語に触れる機会が増え、相互理解が深まりました。 ヨーロッパの人々は、シェンゲン協定によって、より緊密な共同体を形成しつつあります。

しかし、シェンゲン協定は良い影響ばかりではありません。国境管理の負担が軽減された一方で、テロリストや犯罪者が容易に国境を越えてしまうという、新たな問題も浮上しました。また、不法移民の増加も懸念されています。

これらの問題に対処するため、シェンゲン協定加盟国は、共通のビザ政策の導入や警察機関同士の情報共有の強化など、様々な取り組みを進めています。 シェンゲン協定は、ヨーロッパの人々に多くの恩恵をもたらしましたが、同時に課題も突きつけました。 加盟国は協力し、これらの課題を解決していくことが求められています。