為替相場を動かす「5・10日要因」とは？

為替相場を動かす「5・10日要因」とは？

企業の決済が集中する「5・10日」

毎月5日と10日は、多くの企業にとって資金繰りが慌ただしくなる日です。これは、国際的な商習慣が関係しています。
輸出や輸入を行う企業にとって、商品の受け渡しと代金の支払いは重要な取引です。国際的な取引の場合、この代金の支払いは、慣習的に毎月5日と10日に集中する傾向があります。
そのため、輸出企業にとっては代金を受け取る日、輸入企業にとっては代金を支払う日として、これらの日が重要な意味を持つようになります。
特に、海外との取引で多く利用されるアメリカドルは、円とは異なる通貨のため、取引の都度、両替が必要となります。毎月5日と10日は、多くの企業が円をドルに、あるいはドルを円に換金するため、為替相場が大きく変動する可能性も秘めています。企業は、このような為替変動リスクも考慮しながら、資金繰りを管理していく必要があると言えるでしょう。

石油会社を例としたドル需要の増加

日本はエネルギー資源の多くを海外からの輸入に頼っており、その代表格と言えるのが石油です。国内の石油会社は、海外の産出国や企業から原油を購入し、国内に持ち込んでいます。この時、取引は国際的な慣習に従って米ドル建てで行われることが一般的です。

例えば、日本の石油会社が中東の産油国から原油を輸入するとしましょう。契約が成立し、輸入する原油の量と価格が決まると、石油会社は契約で定められた期日までに、原油の代金を米ドルで支払う義務が生じます。

ここで、決済通貨が日本円ではなく米ドルであることがポイントです。日本の石油会社は、原油の輸入代金を支払うために、保有する日本円を米ドルに換金する必要があります。そして、多くの場合、この決済日は契約日から数日後、例えば5日後や10日後などに設定されています。

つまり、日本の石油会社は、原油輸入のための代金決済が近づくにつれて、保有する日本円を米ドルに換金し始めます。そして、多くの石油会社の決済日が集中する5日後や10日後には、為替市場において米ドルを買う動きが活発化し、ドルの需要が高まることになるのです。これは、一例に過ぎませんが、このように国際的な取引において米ドルが基軸通貨として利用されている限り、日本の企業は常にドル需要を抱えていると言えるでしょう。

「5・10日要因」の為替相場への影響

毎月5日と10日は、多くの企業にとって、貿易決済や給与の支払いが集中する日です。そのため、特に輸入企業が多い日本では、これらの支払いに必要なドルなどの外貨需要が急増します。
企業は円を売ってドルを買うため、一時的に円が売られやすく、ドルが買われやすい状況となります。これが、円安ドル高の動きにつながるのです。
このような、5日と10日頃に為替相場が変動しやすい現象を、「5・10日要因」と呼びます。
特に、月末や四半期末など、企業の決算期が近い時期には、この傾向が顕著に見られます。
為替相場は、経済状況や金融政策など、様々な要因によって変動しますが、「5・10日要因」のように、企業の資金繰りも相場に影響を与える要素の一つと言えるでしょう。

為替相場の変動に注意が必要

海外旅行や海外送金などを考えている方にとって、為替相場の変動は無視できない問題です。旅行資金が円安で減ってしまったり、送金額が変わってしまったりする可能性があるからです。
為替相場は様々な要因で変動しますが、中でも「5・10日要因」と呼ばれるものがあります。これは、毎月5日と10日前後に企業の決済が集中するため、為替相場が大きく変動する可能性があるというものです。
もちろん、この「5・10日要因」は、為替相場を動かす要因の一つに過ぎず、必ずしもこの日に大きな変動が起こるわけではありません。しかし、海外旅行や海外送金などを予定している方は、事前に為替相場の動向をチェックしておくことが大切です。
ニュースや経済指標などで「5・10日要因」という言葉を見聞きしたら、企業の決済が集中するタイミングであることを意識し、為替変動に注意しましょう。余裕を持って両替をする、あるいは送金の日をずらすなどの対応も検討すると良いでしょう。

まとめ

毎月の5日と10日は、為替市場において「5・10日要因」と呼ばれる特徴的な動きが見られることがあります。これは、企業の月末月初における決済が集中することに起因する現象です。

企業は、一般的に月末に締め切った取引の支払いを翌月5日や10日に行うことが多いため、この時期には銀行を通じて円売り外貨買いの注文が集中し、円安に進む傾向があります。特に、輸出企業が多い日本では、この傾向が顕著に見られることがあります。

しかしながら、為替相場は需供給関係だけでなく、金利動向や経済指標、政治情勢など、様々な要因によって複雑に変動します。そのため、「5・10日要因」だけで為替の動きを予測することは困難です。

それでも、「5・10日要因」のように特定の時期に起こりやすい現象を理解しておくことは、為替市場の動向を把握する上で有用です。為替変動のリスクを意識し、短期的な変動に惑わされずに、中長期的な視点で投資判断を行うことが重要と言えるでしょう。