年金運用と数理債務:将来への備えを適切に
日本の年金制度は、現役世代が保険料を納め、その保険料が年金積立金として運用され、将来、自分たちが高齢者になった時に受け取る、そしてその一部は、現在、年金を受給している世代に給付されるという世代と世代が支え合う仕組みになっています。
この仕組みを将来にわたってきちんと維持していくためには、将来の年金給付に必要な資金を、今からしっかりと準備しておくことが非常に重要になります。
将来の年金給付に必要な金額を、現在の価値に置き換えて計算したものが、数理債務と呼ばれるものです。将来受け取る年金の価値は、インフレなど経済状況によって変動しますが、数理債務は、将来の年金給付を約束されている金額を、現在の価値に換算することで、年金財政の健全性を測る指標の一つとして用いられています。
数理債務は、人口動態や経済状況、そして年金制度の給付と負担に関する制度設計によって大きく変動します。少子高齢化の進展に伴い、年金保険料を納める現役世代が減少し、年金を受け取る高齢者が増加すると、数理債務は増加する傾向にあります。
政府は、数理債務の状況を踏まえながら、年金制度の改革を進めていく必要があります。具体的には、保険料の引き上げや給付水準の見直しなどが検討課題となります。