経済学

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経済危機のサイン?駆け足のインフレーションとは

近年、物価が急激に上昇する現象が私たちの生活を圧迫しています。これは「激しい勢いの物価上昇」と表現され、経済学では「駆け足のインフレーション」とも呼ばれます。具体的には、物価水準が1年間で10%を超える勢いで上昇することを指します。 この現象は、私たちの日常生活に大きな影を落とします。例えば、去年まで100円で購入できていた牛乳が、今年は110円、120円と、まるで階段を駆け上がるように値上がりしていくのです。しかも、牛乳に限った話ではありません。パンや卵、野菜、日用品など、生活に欠かせないあらゆるものが、同じように高いペースで値上がりしていくことを想像してみてください。 家計をやりくりする立場としては、大変な負担となります。今まで通りの生活を維持しようとしても、支出は雪だるま式に膨れ上がっていくからです。食料品や日用品の購入を我慢したり、光熱費を節約するために冷暖房の使用を控えるなど、生活レベルを下げざるを得ない状況に追い込まれる可能性も出てきます。
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信用創造の仕組みを無限等比級数の公式で理解する

私たちが銀行にお金を預けると、そのお金は安全な場所に保管され、必要な時に引き出すことができます。しかし、銀行は預かったお金のすべてをただ金庫に眠らせているわけではありません。 銀行は、預かったお金の一部を、万が一に備えた支払準備金として中央銀行に預け入れます。そして、残りの大部分のお金は、企業や個人への融資に回されます。 例えば、企業が新しい工場を建設するために銀行からお金を借りたり、個人が住宅ローンを組んで家を購入したりする際に、銀行預金が活用されています。銀行からお金を借りた企業や個人は、そのお金を使って経済活動を行い、経済を活性化させていきます。 このように、銀行は預金という形で集めたお金を、融資という形で企業や個人に提供することで、社会全体のお金の循環を生み出しているのです。この仕組みを信用創造と呼びます。信用創造は、経済活動を支え、成長を促す上で非常に重要な役割を果たしています。
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人生を変える?機会費用の考え方

- 機会費用とは日々生活する中で、私たちは常に何かを選び、何かを諦めています。休日に旅行に行くのか、家でゆっくり過ごすのか、それともアルバイトをするのか。このような選択場面において、私たちが意識すべき重要な概念が「機会費用」です。機会費用とは、簡単に言うと、何かを選択した時に、諦めた他の選択肢から得られたであろう利益のことを指します。例えば、週末に旅行に行くことを選択した場合、その間アルバイトをして得られたであろう収入が機会費用となります。もし旅行に行かずにアルバイトをしていれば、5万円の収入を得られたとします。この場合、旅行の機会費用は5万円となります。重要なのは、機会費用は目に見える形で現れるとは限らないということです。例えば、家でゆっくり過ごすことを選択した場合、目に見える収入は発生しません。しかし、家で読書や映画鑑賞をして過ごせば、心の豊かさや新たな知識を得られたかもしれません。これらの目に見えない利益も、機会費用を考える上で重要な要素となります。機会費用を意識することで、私たちはより合理的な意思決定ができるようになります。旅行に行く価値が5万円以上の価値をもたらすと判断すれば、旅行を選択することは合理的と言えるでしょう。反対に、5万円以下の価値しかないと判断すれば、アルバイトを選択することが合理的かもしれません。日常生活の様々な場面で、私たちは選択を迫られます。その際に「もし違う選択をしていたら、どんな利益があっただろう?」と自問自答することで、より納得のいく選択ができるようになるはずです。
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需要が増えすぎると物価が上がる?需要プル・インフレーションを解説

- 需要プル・インフレーションとは需要プル・インフレーションは、経済活動が活発化し、モノやサービスに対する需要が供給能力を上回ることで発生するインフレーションです。景気が良くなると、企業は業績向上を見込んで設備投資や雇用を増やし、賃金も上昇します。人々の所得が増えることで消費意欲が高まり、様々なモノやサービスの需要が増加します。しかし、生産能力を超えるほどの需要が発生すると、企業は供給不足に陥ります。この供給不足を解消するために、企業は商品の値段を引き上げます。需要が供給を上回っている状況では、たとえ価格が上がっても消費者は購入しようとします。結果として、モノやサービスの価格が上昇し続け、経済全体で物価が上昇するインフレーションへと繋がります。需要プル・インフレーションは、経済成長の過程で発生する可能性がある現象です。しかし、過度なインフレーションは、企業の仕入れコスト増加や家計の生活費負担増加につながり、経済活動の停滞を招く恐れもあります。そのため、政府や中央銀行は、金融政策や財政政策を通じて需要と供給のバランスを調整し、インフレーションの抑制に努めています。
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経済学の原点:モノを通じた人間の営みを考える

- 経済学とは何か?経済学は、私たちの日常生活に深く関わる学問ですが、その明確な定義は時代や学者によって異なる解釈が存在します。 人々の行動や社会の仕組みを分析する際に、多様な視点から考察することで、複雑な経済現象を解き明かす鍵となる学問と言えるでしょう。具体的には、人々がどのように行動し、その結果として社会がどのように変化するのかを観察し、分析します。例えば、商品の価格が上昇すれば需要は減少し、逆に価格が下落すれば需要は増加するといった関係性を明らかにします。また、企業がどのように利益を追求し、市場で競争するのか、政府がどのように経済活動に介入するのかといった問題も経済学の重要なテーマです。経済学は、ミクロ経済学とマクロ経済学の二つに大きく分けられます。ミクロ経済学は、個人や企業といった経済主体に焦点を当て、個別の市場における需給の動きや価格決定のメカニズムを分析します。一方、マクロ経済学は、一国全体経済を対象とし、国民所得や雇用、物価といった経済全体指標の動きを分析します。経済学は、歴史や政治、社会学など、他の様々な学問分野とも密接に関係しています。歴史的な出来事が経済にどのような影響を与えたのか、政治体制や社会制度が経済活動にどのような影響を与えるのかといった問題を考える上でも、経済学の知識は欠かせません。経済学を学ぶことは、私たちの身の回りで起こる経済現象を理解するだけでなく、社会全体の仕組みや未来を展望する力を養うことにも繋がります。
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スティグリッツ:情報の経済学者

- 経済学の巨人1943年生まれのアメリカの経済学者、ジョセフ・ユージン・スティグリッツ氏。現代経済学に多大な影響を与えた、まさに巨人のような存在です。彼は輝かしい経歴の中で、様々な経済理論を研究し、数多くの論文を発表してきました。中でも特に注目すべきは、「情報の非対称性」に関する研究です。情報の非対称性とは、経済取引において、売手と買手の間で情報量に差がある状態を指します。例えば、中古車の売主は、その車の状態について買主よりも多くの情報を持っていますよね。スティグリッツ氏はこの情報の非対称性が、市場メカニズムに歪みを生むことを明らかにしました。従来の経済学では、市場は常に効率的に機能するとされてきましたが、情報の非対称性がある状況下では、必ずしも効率的な結果が得られないのです。彼の研究は、従来の経済学の常識を覆し、現代経済学に新たな視点を提供しました。その功績が認められ、スティグリッツ氏は2001年にノーベル経済学賞を受賞しています。スティグリッツ氏の研究は、経済学の世界にとどまらず、現実の社会にも大きな影響を与えています。例えば、情報の非対称性を解消するために、消費者保護の重要性が認識されるようになりました。また、企業は、消費者に対してより多くの情報を提供する必要性が高まっています。このように、スティグリッツ氏の功績は、現代経済学の基礎を築き、私たちの社会にも大きな影響を与え続けています。彼はまさに、「経済学の巨人」と呼ぶにふさわしい存在と言えるでしょう。
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市場の不安定要因:需要と供給の不均衡

- 需要と供給の関係 経済学の基礎を築く上で欠かせない要素として、需要と供給の関係が挙げられます。これは、市場における商品の価格や取引量を決定づける重要な要素であり、経済の安定にも深く関わっています。 需要とは、ある商品やサービスに対して、消費者がどの程度の量を購入したいと考えるかを表します。例えば、新しいスマートフォンが発売された際に、多くの人がその性能やデザインに魅力を感じ、購入を希望すれば、そのスマートフォンの需要は高まります。一方、供給とは、生産者が市場に対して、ある商品やサービスをどの程度の量提供できるかを表します。需要の高いスマートフォンであれば、多くの企業が競って生産し、市場に供給しようとします。 需要と供給の関係は、シーソーのようなものと例えられます。需要が高まれば価格は上昇し、供給が増えれば価格は低下します。そして、需要と供給が釣り合った状態、つまり需要量と供給量が一致した状態を均衡と呼びます。均衡状態では、価格は安定し、市場は安定的に機能します。 しかし実際には、様々な要因によって需要と供給のバランスは常に変動しており、価格も上下します。需要と供給の関係を理解することは、経済の動きを把握し、市場メカニズムを理解する上で非常に重要です。
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経済学の歩み:学派という視点

経済学は、社会における資源の分配や経済活動を分析する学問ですが、その捉え方は時代や社会状況、そして学者自身の視点を反映して、実に多様です。経済現象は複雑に絡み合っており、ある視点から見れば正しい解釈も、別の視点から見れば異なった解釈となり得ます。この多様性を理解する上で重要なキーワードとなるのが「学派」です。 学派とは、経済現象に対する共通の考え方や分析手法を持つ経済学者集団を指します。代表的な学派としては、アダム・スミスに端を発する古典派、国家による経済介入を重視するケインズ派、市場メカニズムによる効率的な資源配分を重視する新古典派などが挙げられます。それぞれの学派は、歴史的な背景や社会問題、そして思想的な立場を反映して独自の理論体系を築き上げてきました。 例えば、18世紀後半の産業革命期に生まれた古典派は、自由放任主義に基づいた市場メカニズムによる経済成長を重視しました。一方、1930年代の世界恐慌を経験したケインズは、有効需要の不足が不況を引き起こすと考え、政府による積極的な財政政策の必要性を主張しました。このように、経済学は時代や社会状況に応じて常に進化し続けており、様々な学派がそれぞれの視点から経済現象を分析することで、より深い理解を目指しています。経済学を学ぶ際には、特定の学派の理論だけを学ぶのではなく、それぞれの学派の特徴や歴史的背景、そして相互の関係性を理解することが重要です。
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将来設計の強力な味方:確率過程

- 確率過程とは確率過程とは、時間とともに変化する偶然性に左右される現象を、数学的なモデルを使って表したものです。私たちの身の回りには、例えば、株式市場の値動きや天候の変化、病気の流行状況など、予測が難しい出来事がたくさんあります。このような、不確実性をはらんだ現象を分析し、将来を予測するための道具として、確率過程は非常に重要な役割を担っています。確率過程は、ある時点における状態が、確率的な法則に従って次の時点の状態へと遷移していくという考え方に基づいています。たとえば、サイコロを何度も振ることを想像してみてください。それぞれの試行は独立しており、どの目が出るかは偶然によって決まります。このように、一つ一つの出来事は予測不可能でも、その背後にある確率的な法則を明らかにすることで、全体としての傾向やばらつきを把握することができるのです。確率過程は、物理学、化学、生物学などの自然科学分野から、経済学や金融工学などの社会科学分野まで、幅広い分野で応用されています。例えば、金融市場における株価や為替レートの動きをモデル化する場合、確率過程を用いることで、リスクを評価し、より適切な投資戦略を立てることができます。また、伝染病の流行状況を予測する場合にも、確率過程を用いることで、感染拡大の速度や規模を推定し、効果的な対策を立てることができます。
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個人の選択が織りなす経済:ミクロ経済学入門

- ミクロ経済学とはミクロ経済学は、経済を構成する個々の要素、つまり家計や企業に焦点を当てた学問です。 人々が日々行う買い物や、企業が生産活動を行う際にどのように判断し、行動しているのかを分析します。私たちが暮らす社会には、限りある資源しかありません。時間やお金、そしてモノもすべて有限です。そのため、個人は限られた予算の中で最大の満足を得られるように、企業は限られた資源で最大の利益を得られるように、それぞれ行動しています。 ミクロ経済学は、このような状況下での行動を「合理的な経済主体」という仮定のもとに分析していきます。例えば、ある商品をいくらで販売すれば、企業は最大の利益を得られるのか、消費者はどのような条件であればその商品を「買い」と判断するのか、といった問題を分析します。 こうして、需要と供給の関係や価格の決定メカニズム、市場における競争といった経済活動の基本的な仕組みを解き明かしていくのがミクロ経済学です。 ミクロ経済学を学ぶことで、私たちの身の回りで起こる経済現象をより深く理解し、社会全体の資源配分を効率化するための視点を養うことができます。
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賢い支出で満足度UP!:ゴッセンの第二法則のススメ

- 家計管理のヒント 日々の暮らしの中で、誰もが少しでも賢くお金を使いたいと考えているのではないでしょうか。 毎日何気なく使っているお金も、使い方ひとつで、より大きな満足を得ることができるかもしれません。 より満足度の高いお金の使い方のヒントとなるのが、経済学の法則である「ゴッセンの第二法則」です。 この法則は、簡単に言うと、「限られた資源(時間やお金)は、様々なものに分散して使うことで、より大きな満足を得られる」というものです。 例えば、毎日同じものを食べるよりも、違うものを食べることで、食事に対する満足度は高くなりますよね。 これは食事に限った話ではなく、洋服や旅行など、あらゆるものに当てはまります。 この法則を家計管理に当てはめてみましょう。 例えば、毎月の収入をすべて食費に費やすよりも、食費、被服費、娯楽費など、いくつかの項目にバランス良く配分することで、より大きな満足を得られる可能性があります。 もちろん、人によって価値観や優先順位は異なるため、最適な配分はそれぞれ異なります。 大切なのは、「ゴッセンの第二法則」を参考に、自分にとっての最適なバランスを見つけ出すことです。 そのためにも、まずは家計簿などを活用して、自分のお金の使い方を把握することから始めてみましょう。
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満足度を左右する?ゴッセンの第一法則

- はじめにつれて 私たちは毎日、何かを消費して暮らしています。美味しい食事、素敵な洋服、便利な家電製品など、私たちがお金を使う対象は実に様々です。そして、これらの消費は私たちに喜びや満足感を与えてくれます。新しい洋服を買った時の高揚感、美味しいものを食べた時の幸福感、便利な家電製品を使っている時の快適さ。このようなプラスの感情は、私たちが消費を続ける大きな理由の一つと言えるでしょう。 しかし、同じものを何度も消費していくうちに、その喜びや満足感は少しずつ減っていくように感じませんか?例えば、大好きなケーキでも、一つ目を食べた時ほどの感動を、二つ目、三つ目と味わえるでしょうか?多くの人は、最初の感動が薄れていくように感じるのではないでしょうか。 これは決して、私たちが贅沢になったり、飽きっぽくなったことを意味するわけではありません。実は、このような消費と満足感の関係には、経済学の法則が関係しているのです。この法則は「ゴッセンの第一法則」と呼ばれ、私たちの消費行動を理解する上で非常に重要な概念となっています。今回は、この「ゴッセンの第一法則」について詳しく解説し、私たちの消費と満足感の関係について深く考えていきましょう。
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ゴッセンの法則:経済学の基礎

- ゴッセンとはヘルマン・ハインリヒ・ゴッセン(1810-1858)は、19世紀前半にドイツで活躍した経済学者です。彼は、人間の経済活動を数学的に分析しようと試みた先駆者の一人として知られています。ゴッセンは、従来の経済学があまりに哲学的な議論に偏っていると考え、人間の行動をより厳密に、数量的に捉えることを目指しました。彼の主著である『人間交易の諸法則ならびにこれより生ずる人間行為の諸法則の発展』(1854年)の中で、ゴッセンは後の経済学に大きな影響を与えることになる重要な概念を提唱しました。その中でも特に有名なのが、「限界効用逓減の法則」です。これは、同じ財やサービスを消費する際、消費量が増えるごとに、そこから得られる満足度(効用)は次第に減っていくという法則です。例えば、喉が渇いている時に一杯目の水を飲むと大きな満足感が得られますが、二杯目、三杯目と飲み進めるにつれて、その満足感は徐々に減っていくという状況を想像してみてください。ゴッセンの著作は、出版当時はほとんど注目されませんでした。それは、彼の数理的な分析方法が当時としてはあまりに革新的で、当時の学者には理解されにくかったためです。しかし、後に彼の業績は、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズやカール・メンガーといった経済学者によって再評価され、経済学の古典として認められるようになりました。限界効用理論は、現代のミクロ経済学の基礎となる重要な理論の一つとなっており、需要曲線の導出など、現代経済学の様々な分析に用いられています。
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物価上昇の影に潜むコストプッシュインフレ

- コストプッシュインフレとは コストプッシュインフレとは、企業がモノやサービスの価格を上げることで起こるインフレのことを指します。普段、私たちが商品を購入する際、その価格には、原材料費や人件費、輸送費などの様々な費用が含まれており、企業は利益を得るために、これらの費用を上回る価格を設定しています。 コストプッシュインフレは、これらの費用が増加することによって、企業が価格転嫁せざるを得なくなり、商品の値上げにつながるというメカニズムで発生します。 例えば、世界的な天候不順の影響で農作物の収穫量が減ったり、原油価格が高騰したりすると、食品やエネルギー関連商品の価格が上昇します。また、人手不足が深刻化し、人件費が上がれば、その分が商品の価格に上乗せされることになります。 コストプッシュインフレは、需要が増えているわけではないのに、供給側の都合で価格が上昇してしまうため、消費者にとっては厳しい状況を引き起こします。収入が変わらないのに、モノやサービスの価格だけが上がれば、家計は圧迫され、生活水準は低下してしまう可能性があります。
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ケインズ経済学:需要が経済を動かす

- ケインズ経済学とは20世紀を代表する経済学者の一人、ジョン・メイナード・ケインズによって提唱された経済理論が、ケインズ経済学です。1930年代、世界は未曾有の不況、世界恐慌に陥りました。人々は仕事を失い、企業は倒産し、経済は暗澹たる状況でした。従来の経済学では、この恐慌を説明することも、解決策を見出すこともできませんでした。そこで、ケインズは、従来の経済学の常識を覆す、新たな理論を打ち立てたのです。ケインズは、経済活動のレベル、つまりモノやサービスがどれだけ生産され、消費されるかは、生産能力ではなく、需要によって決定されると考えました。人々がモノやサービスを求める需要がなければ、企業は生産する意欲を失い、経済は停滞してしまいます。これが、ケインズ経済学の根幹をなす「有効需要の原理」です。この考え方は、当時の常識を覆すものでした。従来の経済学では、市場メカニズムが働けば、需要と供給は一致し、経済は常に完全雇用状態にあるとされていました。しかし、世界恐慌は、市場メカニズムが必ずしも機能するとは限らないことを証明したのです。ケインズは、政府が積極的に経済に介入することで、需要を創出し、経済を不況から脱却できると主張しました。具体的には、公共事業などを通じて、政府が支出を増やし、雇用を創出することで、需要を喚起するという方法です。ケインズ経済学は、世界恐慌後の資本主義経済に大きな影響を与え、多くの国で経済政策に採用されました。そして、現代の経済学においても、重要な理論の一つとして、その考え方は受け継がれています。
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経済を動かす力とは?ケインズ経済学入門

20世紀を代表する経済学者の一人として、ジョン・メイナード・ケインズの名は世界中に知られています。1883年にイギリスで生まれた彼は、ケンブリッジ大学で経済学を学び、卒業後は母校の教壇に立ちました。彼の師であるアルフレッド・マーシャルもまた、経済学の発展に大きく貢献した、世界的に有名な経済学者です。 ケインズは、1929年に始まった世界恐慌をきっかけに、従来の経済学の考え方を大きく変える理論を提唱しました。それは、不況時に政府が積極的に公共事業などにお金を使うことで、需要を創造し、経済を活性化させるというものでした。この考え方は「ケインズ経済学」として知られ、世界恐慌からの脱却に大きく貢献したと言われています。 彼の代表的な著書である『雇用・利子および貨幣の一般理論』は、世界中の経済学者に大きな影響を与え、今日の経済政策にも影響を与え続けています。ケインズは、経済学という学問分野に革命をもたらしただけでなく、その理論は世界恐慌からの脱出に貢献し、多くの人々の生活を救いました。彼は、20世紀を代表する、最も影響力のある経済学者の一人と言えるでしょう。
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約20年周期の景気変動!クズネッツ循環とは?

- クズネッツ循環とはクズネッツ循環とは、約20年の周期で訪れる景気の波のことで、アメリカの経済学者であるサイモン・クズネッツによって提唱されました。1930年代、クズネッツはアメリカ経済の長期間にわたるデータを分析していました。その結果、彼は約20年という周期で景気が好況と不況を繰り返していることを発見しました。この発見に基づいた経済変動の理論が、クズネッツ循環と呼ばれるものです。別名として、クズネッツの波や建築循環といった呼び方も存在します。クズネッツ循環は、主に設備投資、特に住宅投資の変動によって引き起こされると考えられています。好景気になると企業は生産活動を増やし、労働需要が高まります。それに伴い賃金も上昇し、人々の購買意欲も高まります。すると、住宅需要も増加し始めます。しかし、住宅の建設には時間がかかるため、需要が高まってから実際に供給が増えるまでにはタイムラグが生じます。そのため、住宅価格は上昇し、やがて需要を上回る供給過剰の状態に陥ります。すると、住宅価格は下落し、住宅投資は縮小に向かいます。この住宅投資の変動が、約20年周期の景気変動、すなわちクズネッツ循環を生み出すと考えられています。クズネッツ循環は、経済の長期的な動向を理解する上で重要な概念の一つとなっています。
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知っておきたい経済原則:財の『排他性』とは?

- 経済における「排他性」とは 経済学において「排他性」は、財やサービスを扱う上で欠かせない概念です。これは、ある人が財やサービスを消費すると、他の人が同時に同じものを消費することができなくなる性質を指します。 例えば、あなたが今食べている一切れのケーキがあるとします。あなたがそのケーキを食べると、他の人は同じ一切れを食べることはできません。これが排他性の典型的な例です。つまり、「早い者勝ち」の状態であり、誰かが先に消費してしまうと、他の人はそれを利用できないことを意味します。 この排他性は、経済活動において重要な役割を果たします。なぜなら、排他的な財やサービスには希少性が生じるからです。誰もが同時に利用できるものではなく、限られた人だけが利用できるため、その利用権に対して対価が発生します。これが市場における価格形成のメカニズムに繋がります。 一方で、公園のベンチのように、複数の人が同時に利用できるものもあります。このような財やサービスは「非排他的」と呼ばれ、排他的な財やサービスとは異なる扱いが必要となります。
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外貨預金と為替リスク

- 外貨預金の魅力外貨預金は、円預金よりも高い金利を受け取れる可能性があるため、魅力的な資産運用方法の一つと言えるでしょう。特に、近年のような低金利が続く日本では、高い金利が期待できる外貨預金に注目が集まるのも当然のことかもしれません。とりわけ、日本円と比べて金利の高い通貨の外貨預金は人気があります。しかし、外貨預金には、円預金にはない特有のリスクが存在します。それが為替リスクです。外貨預金は、預け入れ時と受取時で円と外貨の為替レートが変動することで、受取時の円換算額が預入時よりも減ってしまう可能性があります。例えば、1ドル100円の時に1万ドル預けたとします。満期時に1ドル90円になっていれば、元本は90万円になり、10万円の損失が発生してしまいます。さらに、為替レートの変動によって利息についても円換算後の受取額が変動します。高い金利に魅力を感じて外貨預金を始めたとしても、為替レートの影響で円換算すると、当初の予想よりも低い利益になってしまう可能性も考慮する必要があります。このように、外貨預金は為替リスクと隣り合わせであることを理解しておく必要があります。外貨預金を始める際には、将来の為替レートの変動を正確に予測することが難しいことを踏まえ、余裕資金で行うなど、慎重な判断が求められます。
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お金を払わなくても?排除不可能性を解説

- 排除不可能性とは -# 排除不可能性とは 排除不可能性とは、ある財やサービスを供給する際に、対価を支払わない人をその利用から排除することが難しい性質を指します。 例えば、私たちが毎日吸っている空気は、誰かが料金を支払わなくても自由に呼吸できます。 これは空気を供給する側が、呼吸にお金を払わない人を排除することが事実上不可能だからです。 このように、誰でも対価の有無に関わらず利用できてしまう性質が排除不可能性です。 経済学では、この排除不可能性は公共財を考える上で重要な要素となります。 公共財は、公園や街灯のように、一部の人だけが利用するのではなく、地域社会全体にとって利益をもたらすものです。 しかし、排除不可能性が故に、民間企業が費用を回収するのが難しく、供給が不足する可能性があります。 そのため、公共財は政府が税金などを財源として供給することが一般的です。 排除不可能性は、非排除性、消費の非排除性、消費の排除不可能性とも呼ばれます。
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お金で「排除」?経済における「排除可能性」を解説

- 「排除可能性」とは?「排除可能性」とは、ある商品やサービスについて、お金を払わない人にはそれを利用できないようにすることを指します。言い換えれば、対価を支払った人だけが、その商品やサービスから利益を得られる状態のことです。私たちの身の回りには、この「排除可能性」が溢れています。例えば、お店で売られているお菓子。お金を払わずに持って帰ることはできませんよね。映画館で映画を見るにも、電車に乗るにも、決められた料金を支払う必要があります。これらはすべて、お金を払わない人はサービスを受けられないという「排除可能性」に基づいています。もし「排除可能性」がなければ、誰もがお金を払わずに商品やサービスを享受しようとするかもしれません。そうなれば、お店や企業は利益を得ることが難しくなり、サービスを提供し続けることができなくなってしまいます。「排除可能性」は、経済活動を支えるための、重要な原則と言えるでしょう。
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購買力平価の先駆者:カッセル

経済学の世界で巨匠と称えられる人物の一人に、グスタフ・カッセルがいます。日常生活ではあまり耳にする機会がないかもしれませんが、彼の功績は私たちの暮らしに大きな影響を与えています。 カッセルはスウェーデン出身の経済学者で、国際金融の分野において多大な貢献をしました。中でも、「購買力平価説」は、彼の名を世界に轟かせた重要な業績と言えるでしょう。これは、為替レートが2国間における物価水準の差異によって決定されるという考え方です。例えば、日本で100円の商品がアメリカで1ドルで購入できる場合、円とドルの為替レートは1ドル=100円になるという具合です。 この説は、現在でも為替レートを理解する上で欠かせない基本的な理論として、世界中の経済学者や為替ディーラーの間で広く用いられています。彼の提唱した理論は、国際貿易や国際金融の安定に寄与し、私たちが享受しているグローバル経済の基盤を築く一助となったと言えるでしょう。
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価値論:経済学における二つの潮流

私たちは毎日、様々な商品やサービスを消費しています。服、食べ物、電車、映画…、あらゆるものには価格がついていますね。では、その価格はどうやって決まっているのでしょうか? なぜあるものは高く、あるものは安いのでしょうか? 価値論は、価格の根拠となる「価値」の本質を探求する学問です。価値は一体どこから生まれるのか? なぜ人々は異なる価値を感じるのか? このような根源的な問いに、経済学の視点から迫ります。 価値の源泉については、これまで様々な議論が交わされてきました。例えば、商品の生産にかかった労働量で価値が決まるとする「労働価値説」、需要と供給の関係で価値が決まるとする「限界効用理論」などがあります。 現代の経済学では、価値は人々の主観的な評価によって決まると考えられています。つまり、同じ商品でも、それを欲しいと思う人にとって価値が高く、そうでない人にとっては価値が低くなるということです。 価値論を学ぶことは、私たちが普段何気なく行っている消費行動を深く理解することにつながります。そして、企業がどのように価格を設定し、消費者に商品をアピールしているのか、その仕組みも見えてくるでしょう。
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価値貯蔵手段:お金の大切な役割

お金は、私たちの生活において無くてはならないものですが、具体的にはどのような役割を果たしているのでしょうか?経済学では、お金の機能は大きく3つに分類されます。 1つ目は「交換手段」です。これは、お金が商品やサービスと交換するために使われることを指します。例えば、パンを買う際に、私たちは小麦粉やイースト菌と交換するのではなく、お金を使って支払いをします。 2つ目は「価値尺度」です。これは、異なる商品やサービスの価値を共通の尺度で測るために使われることを指します。例えば、パンと牛乳の価値は、それぞれお金で表されることで比較が可能になります。 そして3つ目が「価値貯蔵手段」です。これは、お金を将来のために貯めておくことができることを指します。例えば、今月は給料を使い切らずに、来月以降のために貯金しておくことができます。 このように、お金は「交換手段」「価値尺度」「価値貯蔵手段」という3つの機能を持つことによって、私たちの経済活動を円滑に進める役割を果たしているのです。