パックス・ブリタニカ:100年の平和
19世紀初頭から第一次世界大戦が始まるまでの約100年間は、歴史を振り返ると比較的穏やかな時代でした。この時期は「パックス・ブリタニカ」、ラテン語で「英国による平和」と呼ばれ、当時の超大国であったイギリスが世界に大きな影響を与えていました。
1815年のナポレオン戦争終結後、イギリスは世界の覇権を握り、その強大な海軍力と経済力を背景に、国際秩序を主導していました。自由貿易を推進し、植民地を拡大することで、世界経済はイギリスを中心に回っていました。また、イギリスはヨーロッパ大陸の勢力均衡にも積極的に関与し、大規模な戦争の発生を抑止していました。
この時代、産業革命が進展し、蒸気機関や鉄道など、様々な発明や技術革新が生まれました。人々の生活は大きく変化し、経済は発展を続けました。しかし、一方で、イギリスの圧倒的な力による支配体制や、産業革命が生み出した貧富の格差は、新たな対立と戦争の火種を孕んでいました。そして、20世紀初頭、民族主義の高まりや列強間の対立激化など、様々な要因が複雑に絡み合い、第一次世界大戦が勃発します。こうして「パックス・ブリタニカ」は終焉を迎え、世界は再び戦乱の時代へと突入していくことになります。