企業年金の運用戦略における「シェア」の重要性

企業年金の運用戦略における「シェア」の重要性

「シェア」とは

– 「シェア」とは会社で働く人にとって、将来受け取れる年金は大切な関心事です。企業年金の世界では「シェア」という言葉が頻繁に登場しますが、これは一体何を意味するのでしょうか？実は「シェア」には、大きく分けて二つの意味合いがあります。一つ目は「掛金シェア」です。これは、毎月従業員と会社から積み立てられる掛金を、どのように各運用機関に配分するかを決めるものです。例えば、A社とB社という二つの運用機関があるとします。この場合、掛金をA社に70％、B社に30％の割合で預けるといった具合に、それぞれの機関に振り分ける割合を決めるのが「掛金シェア」です。もう一つは「給付シェア」です。こちらは、将来、年金として給付を行う際に、それぞれの運用機関がどの程度の割合を負担するかを示すものです。仮に、A社に預けたお金が順調に運用されて価値が増加し、逆にB社に預けたお金は運用がうまくいかずに価値が減少したとします。この時、年金給付の際にA社の運用結果に70％、B社の運用結果に30％の割合で比重を置くのが「給付シェア」です。これらのシェアは、企業年金の運用成績を左右する重要な要素となります。なぜなら、どの運用機関にどれだけの割合を託すかによって、最終的に受け取れる年金額が変わってくるからです。そのため、それぞれのシェアがどのような仕組みで決まり、将来の年金にどう影響するのかを理解しておくことが大切です。

シェア変更と規制緩和

– シェア変更と規制緩和

1997年4月、それまで企業年金の運用においては、国が定めた厳しいルールがありましたが、そのルールが一部緩和されました。これは、企業年金にお金を出す企業にとって、自分たちの考えで、より自由に年金のお金を運用できるようになったことを意味します。

具体的には、これまで国が決めていた、
* 掛金シェア集めたお金をどの金融商品で、どのくらいの割合で運用するか
* 給付シェア年金として支払う際に、どの金融商品で運用したお金を、どのくらいの割合で使うか

を、企業が独自に決められるようになりました。

この自由化によって、企業は、経済状況や将来の予測に応じて、より柔軟にお金の運用方法を変えることができるようになりました。これが「シェア変更」と呼ばれるものです。

「シェア変更」には、単に掛金シェアや給付シェアの割合を変えるだけでなく、
* お金を預けている運用会社を変える
* 新しい運用会社と契約する
といったことも含まれます。

シェア変更の目的

企業が資産運用を行う際、預ける運用会社や金融商品の組み合わせ、割合などを決めます。これを「シェア設定」と呼びますが、企業は運用状況や経済環境の変化に応じて、このシェア設定を見直すことがあります。これが「シェア変更」です。
では、企業は何のためにシェア変更を行うのでしょうか？
最も大きな目的は、長期的な運用成績の向上とリスク管理の強化です。例えば、ある運用会社の成績が振るわず、このままでは将来の年金資産の減少が懸念される場合、企業は思い切ってその運用会社への預け入れ割合を減らす、あるいは預け入れ自体をやめるといったシェア変更を行います。また、世界経済が大きく変動し、特定の資産の価格が急騰したり、逆に暴落したりするリスクが高まっていると判断した場合には、株式や債券など、異なる資産への投資割合を調整することで、リスクを分散し、安定した収益の確保を目指します。
近年では、従来の財務情報だけでなく、環境問題や社会問題への取り組みなども考慮したESG投資という考え方が広まっています。企業の中には、こうした新たな投資テーマに資金を振り向けるために、シェア変更を活用するケースも増えています。

シェア変更の重要性

従業員の老後の生活を支える企業年金は、長期的な視点で運用を行う必要があり、その安定運用は企業にとって大変重要な責任です。しかしながら、世界経済は常に変動しており、過去に最適化された運用方法が、将来にわたって有効であるとは限りません。外部環境の変化に柔軟に対応していくためには、企業は常に市場の動向や経済状況を把握し、状況に応じて資産配分の見直し、すなわちシェア変更を積極的に行うことが重要となります。

では、シェア変更を行うことにはどのような利点があるのでしょうか。まず、市場環境の変化に合わせて株式や債券など投資対象の比率を調整することで、運用成績の向上を図ることができます。例えば、経済成長が期待できる状況であれば、株式の比率を高めることで、より高いリターンを目指せます。一方、経済の先行きが不透明な場合は、債券など比較的安定した資産の比率を高めることで、リスクを抑えながら安定的な運用を目指せます。

さらに、シェア変更はリスク管理の観点からも重要です。企業年金の運用においては、大きな損失を被るリスクを最小限に抑えることが求められます。たとえ過去に好成績を収めていた投資対象であっても、市場環境の変化によってはその価値が大きく下落する可能性も否定できません。定期的にシェア変更を実施し、投資対象や資産の偏りを是正することで、特定の資産への集中投資によるリスクを抑え、より安定的な運用を実現することが可能となります。このように、適切なタイミングで適切なシェア変更を行うことで、企業は長期的な運用成績の向上とリスクの抑制を両立させ、従業員の大切な年金資産を守ることができるのです。